私のクリニックに、前歯がまっ黒になってしまった子供たちがよく来院されます。なぜこんな事になってしまったのかと理由を聞いてみますと、どうやら「進行止め」(サホライド)を塗られたようなのです。中には「進行止め」と言わずフッ素を塗ると言われて,まっ黒になってしまった子もいました。フッ素では歯の色は変わりません!!
私はその子たちの前歯をみると本当に悲しくなってしまうのです。お母様や子供たちの悩みは深刻です。
「むし歯にしたのは私かもしれないが・・・何とかしてほしくて歯医者に行ったのに、こんなにまっ黒になってしまって、どうしたらいいのか・・・」
「こんなに黒い歯では笑えない」「いじめられるかも」
「女の子なのにかわいそう」「子供の歯をみるたびに落ち込む」
等々。中には涙ながらに語るお母様もいらしゃいます。
でもご安心ください。きれいに治せます。だから泣かないでください。
症例写真ではこの「進行止め」とはどのようなものなのでしょうか?
「進行止め」を塗るとまるでお歯黒の様になってしまいますが、まさにその通りで、もともとお歯黒を参考に開発された薬なのです。昭和45年(1970)に厚生省製造許可されたフッ化ジアミン銀(サホライド)といいます。この時期は日本が高度成長期に入る頃で、子供のむし歯が爆発的に増えたいわゆる「むし歯の洪水時代」でした。どこの歯科医院でも乳歯の治療まで手が回らない状況で、その為、歯の色はまっ黒になるけれども、とりあえずその場しのぎにはなる「進行止め」がたいへん重宝されていましたし、意義のあるものだったと思います。
しかし、時代は変わりました。日本における口腔衛生の意識も向上し、美に対する意識も変わりました。「自然な白い歯」は誰もが望まれる事でしょうし、それは乳歯でも同じ事がいえると思うのです。
もし今現在、お子様の前歯でお悩みのお母様がいらしゃいましたら、あきらめずに小児歯科を専門とする歯科医院で受診される事をお勧めします。必ずどこかに私と同じ考えを持ち、前歯を輝く白い歯に戻してくれる先生がいらしゃるはずです。その出会いを願わずにはいられません。